青い青い空が浮かんでた。
目の前を鳥が優雅に低空飛行をする。
「君等に僕を捕まえる事なんて出来ないでしょう?」嘲笑うかの様に。
青い空は底が見えない。
掌を差し入れたらそこからトロトロと溶けていってしまいそうだ。
座った姿勢のままグググッと最大限に手を伸ばす。
「このまま溶ければ良いのにって言わんとってや」
頭の上から降る声。
伸ばした手を掴まれてキュッと握られる。
「バレた?」
日差しが遮られて陰が落ちる。
さよなら青空。
隠れて見えなくなってしまった。
「バレるも何も、何年一緒やとおもってんの」
困った様に笑われる。
「んー・・・15・・・以上」
「当たらずとも遠からじ」
「・・・」
「・・・」
とりあえず、空白の時間位でそわそわするような付き合いの長さでは無いな。と思った。
右に座った非喫煙者の彼を思い、煙草を左手に持ちかえる。
(どうでもいいけど座るときに「よっこらしょ」はオッサンやで)
こんにちは、青空。
昇ってゆく煙は空に溶けて青と同化していった。
煙を肺に落とし込んで吐き出す。
体内に在った筈の煙は自分の体と分離して空へと昇っていく。
そして、溶けて、消えた。
その煙を名残惜しむ様に手で捕まえる仕草を見せれば
「なにやってんの」
苦笑気味の彼が言った。
「だってさ。羨ましいと思わん?こんなに奇麗な空に」
雲一つない青空。
空から色とりどりの風船が落ちてきてもオカシく無い、青空。
(因みにこれは以前、長身ギタリストに言ったら不思議そうな顔をされた)
両手を伸ばして、空を抱こうとする。
「確かに空は奇麗やけど」
隣の彼が言う。
彼の目に、この青空はどう映っているのだろう。
「ハイドが溶ける必要はないやん。て言うか溶けたらあかん。俺が困る」
・・・・・・なんて身勝手な意見。
一瞬言っている意味が分からなかった。
「歌う人居らんくなったら新しい人探さないかんし」
「ハイドクラスの美人なんて・・・」
「其れより何より・・・」
とぶつぶつ呟く彼に笑いが込み上げてきた。
「あはは。もうえぇよ。てっちゃん。わかったから」
身勝手で自己中心的な意見の羅列。
でも、中身を開けてみればこんなにも 優しい。
その事をハイドは知っている。
「てっちゃんの為にも溶けるのはやめるわ」
最後の一息を深呼吸並みの深い息で吸い込んで、煙草をコンクリートの床に押し付けた。
「・・・そうしてもらえると俺も助かるな」
俺につられて笑う彼と青空が、一瞬重なった気がした。
別段、溶けたいという願望が収まった訳でもない。
その気持ちは今でも健在で、俺の中を元気に走っている。
ただ、彼の方が優しい気がしたから。
溶けたいにも関わらず今でもこうして此処に居るのは、他ならず居心地が良いからだ。
自分勝手で我侭で理不尽な理由。
残りの2人も同じことを言うのだろうな、と背伸びをする。
「さて、そろそろ戻りますか」
立ち上がって踵を返す。
「あ、待ってや!」
慌てて立ち上がる身勝手な人。
俺の少し後ろを歩き出す。
身勝手で自己中心的で我侭で理不尽な言葉。
開けば、暖かい事は重々承知。
そんな彼の為にも、溶けないでいてあげようと思う。
俺も、このまま心地良さを感じていたいし。
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結局どっちも自分勝手だって話(笑)
学校で何やってんだ・・・orz
身勝手だけどどうしようもなく優しい言葉って、泣きそうになる。