SSです。苦手な方はご注意を!
因みに、おめでとう記念SSではないです。
小さな部屋から、ピアノの音が響く。
「♪」
Aの音。弦弾きの長い指がたった一音を押す。
オクターヴ下がって、もう一度Aの音。
「♪」
ふっと指を離して、首を傾げる。
「♪♪♪」
タンタンタンっと指を跳ね上げる。
視線をあげると、大きな目と見つめあい。
「ずれてる…よなぁ?」
聞くと、不安げに小さくうなずいた。
元のAの音とずれている気がするAの音を同時に押す。
指を離す瞬間にペダルを踏んで、エコー掛け。
ウワン…ウワン…とゆっくりと大きな音の波が押し寄せてきた。
「ずれてるなぁ」
ウワン…ウワン…。
鳴り止まない波はやんわりと体を押してくる。
指先を離してペダルを上げて、音は唐突に止まった。
そして、静寂から逃げるように今度はAmのコードが柔らかく押される。
「やっぱちょっと気持ち悪いな」
ザラザラしたAmの不協和音は気にしなければそれまでだけど、体のどこかには引っ掛る。
「ハイド、歌って。俺が弾くから」
微かに狂ったAはそのままに。
ケンは長い指でAのコードを押す。
C# F#m Dm A C# F#m Dm
「わかる?」
口端をつりあげる。
「当然」
歌うたいは不適に笑ってそれに答えた。
靴がリノリウムの床を叩いて音をたてた。
いち、にぃ、さん、し 言葉にならない音がカウントをとる。
たった今君たちに映る俺は
引っ掛るAの音。
微かな不協和音を辿りながら。
それでもピアノの音より強い歌声は狂わされることなく。
紡がれる。
I`m so happy with love
例え自分が少し狂っていたとしても、キラキラ光るこの歌うたいに修正されてしまうのだろう。
少し狂った最後のA一音を弾きながら、ケンはそんな事を思った。
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この後、リーダーに発見されて二人は会議室に連れ戻される…ってオチ(笑)
コード、歌詞、ともにL`Arc~en~Ciel「I`m so happy」より(言うまでも無いか)
因みに、うちのぴあのはGの音が相当ずれてます(調律しろよ)